インタビュー | アミキ ダンスシアターカンパニー

「ともにあること」を守りながら、新しくしつづける

話を聞いた:Elaine Thomas (Artistic Director)
実施日:2026年2月25日

「ともにあること」を、作品にする

アミキが今も大切にしているのは、「ともにあること」です。
創設者が亡くなったあとも、その考え方を作品づくりの中で守り続けています。

アミキは、障がいの有無や経験のちがいをこえて、
さまざまな人が一緒に舞台に立つインクルーシブ・ダンスシアターとして活動してきました。

でも、大切なのは、ただいろいろな人が同じ場所にいることではありません。
その場で生まれる動きや人との関係を、どのように作品にしていくのか。
一人ひとりのちがいを消さずに、どのように全体として一つの舞台をつくるのか。
その考え方が、アミキの作品づくりの中心にあります。

創設者のあとに、何を守るのか

アミキの歴史は、創設者ヴォルフガング・シュタンゲと深くつながっています。
今は、彼が亡くなったあと、新しい芸術監督の体制へ変わっていく時期です。

インタビューで最初に話されたのは、何かを急いで大きく変えることではありませんでした。
まず大切なのは、アミキが大事にしてきた考え方を失わないことでした。

「変えると決めたことは、特にありません。
これから少しずつ変わっていくかもしれませんが、
守りたいものはたくさんあります。
ともにあること。
一人ひとりの力を共有すること。
個人を尊重しながら、集合体として在ること。
そして、私たちはこれからも作品をつくり続けたいと思っています。」

ここで話されていたのは、昔のやり方をそのまま残すことではありません。
大切な考え方を、今いるメンバーや今の状況の中で、もう一度つくっていくことでした。

アミキにとって「守る」とは、同じことを続けるだけではありません。
大事な考え方を、これからの作品づくりの中でも生かしていくことでした。

「マジック」は、人と場から生まれる

取材の中で、こちらから アミキの「 マジック(魔法)」 について尋ねました。
それは特別な技術なのか、それとも別の意味があるのかを知りたかったからです。

返ってきた答えは、「マジック」は一つの方法の名前ではない、というものでした。
それは、アミキの作品づくりがどのように始まるかを表す言葉でした。

「中心にあるのは、その部屋にいる人たちと一緒に働くことです。
技法やスタイルを押し付けるのではなく、
そこにいる人たちと、その人たちが持ち寄れるものから始めていきます。
その人の中にある、本人もまだ気づいていないものを引き出していくのです。」

アミキでは、決まった型に人を合わせることを大切にしていません。
まず、その人の動きや反応をよく見ます。
そこから、新しい表現のきっかけを見つけていきます。

まだ本人も気づいていない力を見つけて、少しずつ育てていく。
それが、アミキの作品づくりの大切な部分です。
そして、そのためには「場」も大切です。
外のワークショップでは、進め方や空気づくりを一からつくる必要があります。
でもアミキには、長く一緒に活動してきたメンバーがたくさんいます。

どのようにクラスに入るか。
どのように相手の動きに反応するか。
どのように助け合うか。
そうしたことが、少しずつ積み重なっています。

だからアミキの場は、誰か一人の指示だけで動いているわけではありません。
メンバーどうしの関係が、場を支えています。

アミキの 「マジック」は、一つの技術ではありません。
人をよく見て、その人の中にあるものを引き出すこと。
そして、長い時間をかけて育った場の力。
その両方が合わさったところにあります。

即興から、作品をつくる

アミキの作品づくりでは、即興(その場でつくる動き)が大きな役割を持っています。
クラスでは、バレエやコンテンポラリーダンスの基礎に触れながら、
一人でも、小さなグループでも、全体でも即興を行います。
音楽も、大きな力になっています。
でも、即興がそのまま作品になるわけではありません。

「即興の中で、とても強い瞬間が起きることがあります。
あるダンサーが新しいことをしたり、
アイデアやキャラクターを感じる動きが出てきたりする。
そうしたら、その部分を取り出していきます。
とても自然なプロセスです。」

アミキは、「よい場」をつくるだけでは終わりません。
即興の中で生まれた動きや関係を、舞台作品へとつくっていきます。
最初は自由に動くところから始まります。
でも作品にしていく段階では、演出や構成も加わっていきます。

「創作の部分は、即興したり、一緒に動いたり、遊んだりするところから始まります。
でも上演作品にしていく段階では、もう少し直接的な演出が入ってきます。」

Michael Vale が物語の流れやテキスト、美術を、
Elaine は動きや音楽を見ます。
ほかにも、美術、衣裳、照明、音響、映像などの専門家が早い段階から関わります。
こうしてアミキは、作品を丁寧につくっていきます。
ただの活動の場ではなく、舞台作品をつくるプロのカンパニーとして考えていることが、
ここにも表れています。

「できない」ではなく、方法を探す

芸術とケアの間で難しさが出ることについて聞いたとき、
返ってきたのはヴォルフガング・シュタンゲの言葉でした。

「ヴォルフガング がよく言っていた言葉に、
“We will find a way” (方法は必ず見つかるはず)があります。
難しさがあれば、私たちは試して、もう一度試して、確認していきます。
最初から『こう見えるべきだ』という考えを、
ダンサーたちに押し付けることはありません。」

たとえば、ハーネスで身体を持ち上げること。
車椅子ユーザーどうしでデュオをつくること。
難しさがあっても、最初から「無理だ」と決めません。
まず、出演者のからだや状況を見ます。
そこから、できる方法を探していきます。

アイデアに人を無理に合わせるのではなく、
その人ができることから作品をつくっていく。
そこから見えてくる動きや関係を大切にしていく。
それが、アミキの考え方でした。

リサーチメモ

アミキは、「ともにあること」を、ただの考え方としてではなく、
作品をつくる方法として扱っていました。

日本でも、インクルーシブな場づくりは、
「開かれた場」や「参加できる機会」として語られることが多いです。

でもアミキは、その先を考えていました。
ちがいを消さずに、一人ひとりを残したまま、どう全体をつくるのか。
即興の中で生まれたものを、どのように観客に届く作品にしていくのか。
その問いが、アミキの実践から見えてきました。