点のプロジェクトから線のキャリアへ

よいワークショップや公演が一度実現したとして、その先に何が残るのでしょうか。
大切なのは、そうした経験を一度きりの成果で終わらせないことです。そこから次の関わりや役割が生まれ、継続的な道筋へつながっていく。
今回見た実践では、その「参加の先」が強く意識されていました。

参加の先に、役割の道筋をつくる

Stopgap の “IRIS” は、「参加する」「応答する」「統合する」「専門化する」といった段階を設け、若者がパフォーマー、教師、振付家などへ進む道を可視化しようとしていました。
DanceSyndrome でも、毎週の継続プログラムや “iCreate” を通じて、出演するだけでなく、ダンスリーダーや振付家として関わる可能性が少しずつひらかれていました。
重要なのは、参加の場を入口で終わらせず、その先に次の役割が見えるようにすることです。

“We are delivering this syllabus to support those that are interested and want to take their dancing further to become a teacher or a choreographer or a performer.”
「私たちはこのシラバスを通して、ダンスをさらに発展させ、その先で教師や振付家、パフォーマーとして活動していきたい人たちを支えています」

—— Cherie Brennan, Stopgap Dance Company

次の役割は、対話の中で見えてくる

DanceSyndrome では、毎週の継続プログラムや “iCreate” が、ダンサーの関心を次の役割へつなげる場にもなっていました。
そこでは、作品に出演する役割と、場を進行し支える役割が、最初からきっぱり分かれているわけではありません。本人の関心や変化に応じて、「次に何を試してみるか」が対話の中で探られていました。
小さな創作プロジェクトや継続的なプログラムは、芽生えた関心を実際に試す場にもなっています。
Stopgap でも、若者や家族との長い関係のなかで、本人の希望や変化を聞き取りながら、次の機会が探られていました。“IRIS” のような仕組みは、道筋をあらかじめ一つに決めるものではなく、その人がどこへ向かいたいのかを見つけ、次のステップへ橋をかけるためのものとして機能していました。
キャリアは、制度だけでつくられるものではありません。継続的な関係の中で関心を聞き取り、実際に試せる場を用意することで、少しずつ形になっていくものでもあります。

一つのカンパニーを超えて、エコシステムを考える

Candoco が象徴的だったのは、自分たちの仕事を「作品を抱えるカンパニー」から、「障がいのある振付家やアーティストが活動できる環境を整えること」へ移し直そうとしていた点です。
限られた人数を抱えるだけでなく、より多くのアーティストが仕事や機会に接続できるようにするには、何を整えるべきか。
DanceSyndrome では、理事がクラスに参加するなど、運営側と現場との距離が近く、継続プログラム、育成、創作、組織運営が切り離されずにつながっていました。
BLINK でも、拠点の中で、アーティスト、サポートワーカー、日常の集まり、創作、外部で教える仕事が地続きにつながっていました。
キャリアを線にするには、個人の努力だけでなく、役割が循環する場や、組織の側の設計が必要になります。
問われているのは、単発の参加機会を増やすことだけではありません。どこに時間と資源を配分し、誰に次の役割を渡し、その変化を何によって見ていくのかという判断です。

“If we’re trying to change the landscape for disabled artists, are we doing that, or are we just making work and therefore making work for the audiences?”
「私たちが障がいのあるアーティストを取り巻く状況を変えようとしているのなら、本当にそうできているのか。それとも、私たちはただ作品をつくり、観客に向けて届けているだけなのか。」

—— Melanie Precious, Candoco Dance Company

■ 見えてきたこと

参加の先にある道筋は、才能のある個人が自力で切り開くだけでは続きません。関心を見つける人、試す機会をつくる人、次の役割へつなぐ人がいて、初めて少しずつ形になっていきます。
若い参加者が次の段階を探せる足場をつくること。本人の関心や変化を、家族やスタッフとの長い関係の中で見守ること。小さなプロジェクトの中で、新しい役割を実際に試せるようにすること。そして、一つのカンパニーの内側だけでなく、より広い仕事や機会へつながる環境を整えること。
方法は違っても共通していたのは、「その場に参加した後、人がどこへ向かえるのか」を、本人の努力だけに委ねないことでした。参加の先を見つめることもまた、場や組織の責任として扱われていたのです。

■ 現場に戻って考える

いま自分たちの現場で、参加した人の「その先」は、誰によって、どこまで想像されているでしょうか。
入口の先にある役割や関わり方を、私たちは本当に用意できているでしょうか。